モンスター

モンスター (1)
百田尚樹氏の小説「モンスター」を紹介します。
最近読んだ小説の中でも、これはかなり面白かった一冊。
美容整形の専門的な内容を含むのですが、極めて詳細な部分まできちんと書かれていて舌を巻きます。
美容整形に興味が有っても無くても引き込まれるシナリオです。
またこの小説はハッピーエンドではなく、バッドエンドが待っている数少ない傑作。

大まかなあらすじは、
一人の女性の生き様を描いた作品です。
その女性は、生まれた時から超弩級のブスでした。
それゆえに小さい頃からイジメに遭い、性格が歪んでいきます。
けれども「私も恋愛したい!」と熱望します。
意中の人が居るのですが、どう頑張っても恋人同士なんかにはなれません。
自分がブス過ぎるので。
でも中身はブスじゃない。と思い込んでいます。
じゃあ、彼の視力を奪ってしまえばいい。
そう考えて「事件」を起こしてしまい、町から出て行かざるを得なくなります。
両親からも縁を切られてしまいます。
そして東京に出て、新しい氏名でド底辺の生活をしつつ「美容整形」という物の存在を遅ればせながら認知し、それに手を染めていきます。
しかし「病気」の治療ではありませんので全額自費となり、ものすごくお金がかかります。
手っ取り早く稼ぐ方法、それは風俗しか有りません。
しかしその酷過ぎる容姿では雇ってもらう事すら困難です。

モンスター (5)
なので最初は客にぶん殴られたりするタイプのお店で我慢して働きます。
まず最初にした美容整形は「眼」でした。
腫れぼったくて人を睨んでいる様な眼を「ふたえ」にするだけでビックリするほど印象が変わりました。
次に鼻、そして上顎・下顎と、結局1000万円以上もかけて普通の女性並み、いやそれどころか絶世の美女になるまで徹底的に美容整形を繰り返していきます。
そしていよいよ満を持して故郷の町に舞い戻ってきます。
約20年前に自分の事を「バケモン」扱いした連中に復讐するために。
そして手に入らなかった「意中の人」を今度こそ自分に振り向かせるために。
結果、40才を目前にしてとうとうその人を「手に入れる」事に成功します。
が、「今のニセモノの自分」ではなく「バケモンだった本来の自分」を愛してくれなきゃ本当の意味での成功ではない。
とうとう本当は自分はあの時の事件を起こした醜いあいつなんだよ。という事を彼に告白します。それでも私を愛してくれるか?と。
彼は「ああ、もちろんだとも!」と答えますが、その時、自分はクモ膜下出血を発症してしまいます。
彼は救急車を呼ぶ事もせずにその場から逃げ去りました。

モンスター (3)
このタイトルの「モンスター」というのはスライムの事でもモンスターペアレントなどクレーマーみたいな人の事でもなく、この主人公の女性の容姿(顔)の事を指します。
文字通りバケモンの様な酷い顔なのです。
そんじょそこらのブスとは一線を画している。
先天奇形など「病気」ではないが、限りなくそれに近いレベル。
それ故に性格もモンスターになってしまった。
そう本人は自己分析します。

私は以前「イケ面とブサ面(クリックにて詳細)という記事で、
その二つは「生まれ持った目鼻立ちの違い」ではなく、「表情・心のあり方」の違いなんだよ。
と説きました。
だから、顔のせいにしてんじゃないわよ!
と最初は思います。
が、それは普通のブスか美人かという範疇での話。
あの記事でも私は小さい字で「眼窩隔離症など明らかな先天奇形が有るとか病的なほどの形態異常がある場合は別」と書いていました。
この主人公の場合は、限りなくそれに近いレベルなのです。
たとえ心が純粋無垢でも、その子の顔を見た瞬間に「げ!」と顔を背けたくなるor二度見してしまう程の醜い容姿だったらどうでしょう。
口に出して言ってなくても「気持ち悪っ(>_<;)」って顔に書いてある様な目で周囲の人が自分の事を見ている。
物心ついた時からずっとそうだったら、どんなに前向きな性格だった人でも心折れるんじゃないでしょうか。

現に本人も何度も自分に問いかける場面が有ります。
人は顔じゃない。中身だよ。と。
ですが実際ちょっと美容整形するだけで周囲の自分に対する態度が面白いほど変化する現実を知ってしまいます。
女性の人生にとって「美」という物がどれほど大きな要素なのか身をもって学びます。
異性に対してだけではない。女性は同性と初めて会った時、「この人は自分よりランクが上の女か下の女か」を無意識のうちに値踏みして言動も態度も変化する生き物。
最底辺から頂点に登りつめる快感。
かつて自分の事をゴミの様に扱った相手に対し徹底的に復讐する様。
読んでいて実に愉快です。
どう書けば読書が脳汁ブシャー!となるかを良く解っている百田さんならではのシナリオ。
時々、オッサン視点だな~と苦笑する展開も散見されますがそれもまた愛嬌。
全く同じシナリオでもこれをもし女流作家が書けばここはこうはならないな。と感じる部分もちょこちょこ有ります。

モンスター (4)
眼を二重瞼にするとか顎のエラを削るとか、いわゆる「美容整形」は「整形外科」ではなく「形成外科」が担当する分野であるという事を私は口酸っぱくこの記事(クリックにて詳細)で書きました。
ですが本書では終始「整形」を使っていました。
術式などあれほど事細かに書かれているのに、まさか百田さんが「形成」外科である事をご存知ないとは到底思えません。
だからあえてこの事は、ストーリーの本筋から外れるので書かずに省いたんだと推察します。
でもできれば明記して周知徹底して下さったら最高なのにと私は思いました。

顔というものはその人の性格や、頭の良さなどあらゆる要素を見える形で表現しています。
人が「あ、この人、賢そうだな。」と感じるのは、過去に実際に賢かった人々がどういう目つきをしていたかを無意識のうちに記憶していて、それと同じ眼の形をしている人を見てそう予測しているにすぎない。
だから、中身はバカでも「そういう風に見える眼の形」に整形してしまえば簡単に騙せる。
というお話が出てくるのですが、これには眼からウロコでした。
確かにそうかもしれない。
同様に「優しそうな人」に見える様にするにはどういう口元の形にすれば良いかなども決まっているのです。
なんという恐ろしい「チート」でしょう。
芸能人などに多いですが、一見利発そうに見えるのに実は喋ったらビックリするほどバカな人とか居ますよね。
ああいうのも全部こういうカラクリだったんだなと判りました。

美人かブスか?
それを判断できる様になる年齢というのは決まっている。
その年齢に達する以前の幼児だと、世間では超弩級のブスだと酷評される顔の子を見ても「可愛い」「好きだ」と思ってしまう事もある。
例の彼というのは唯一自分の事を幼児期にそう評価してくれた子だったのです。
しかし当の年齢を過ぎれば当然、とんでもないドブスだとしか見てくれなくなります。

モンスター (2)
とにかく色々と考えさせられる内容でした。
この女性は結局40才を迎える前にクモ膜下出血でこの世を去る羽目になったわけですが、死因はそれだけではなく、風俗で荒稼ぎする為に長年ピル多用したり内臓にも相当な負担をかけ続けていた事も原因です。
なぜ荒稼ぎする必要が有ったのか? 生まれつきブス過ぎた顔を「普通」レベルにする必要が有ったからです。
それをしなければまともに「人間」としてすら接してもらえないのですから。
最初から普通レベルの顔に生まれていたらそんな大金を必要とする事も早死にする事もなく平凡に幸せに生きられたかもしれません。
もし美容整形に手を出さずド底辺の生活を続けていたら決して恋人も友達もできず、そのうち逆恨みから犯罪でも犯して投獄される様なロクでもない人生しか送れなかった事でしょう。
その意味ではこれほど波瀾万丈な人生を送れて良かったのかもしれない。
でもやっぱり心は終始「モンスター」でした。
自分でも「もはや私は狂っている」と自覚している程でした。

いったいどうすれば一番良かったのでしょうか?
私は、
親がお金を惜しまず幼児期からこの子に手術を受けさせて「普通」の顔に形成するべきだったと思います。
とは言え経済的に困窮していたらなかなか難しいかな~。
でも、それでもやる責任が有ると思います親には。
斜視が有るのに無知な親のせいで放置されて弱視になってしまう人、アデノイドが有るのに無知な親のせいで放置されて何事にも集中できない人になってしまう子。
そういう人々を診ていると、顔だって幼稚園に上がる前に最優先で「治す」義務があるとさえ思えます。
我が子の顔が常軌を逸している容姿である事を認め、決して安くはないお金をかけてこれを治す。しかも両親揃ってその事を決意するのは並大抵の事ではないと思いますが。

もしこの作品を読んだ方がいらっしゃれば、是非その人なりの考察を拝聴してみたいと思います。
また百田さん自身にも、どういう思いでこれを書かれたのかも聞いてみたいしお話ししてみたいとすごく思いました。
 
Posted by れいな on 03.2016   2 comments
Category :小説・映画

普段、本は殆ど読まないけどれいなさんのイチオシなら読む価値ありそうです^^
男性の[かわいい]と女性の[かわいい]の観点っててちょっと違いますよね。
女性側は仕草、内面を重視しますが男性陣は容姿全般のイメージ。
私は第一印象で大体決まる。 一目惚れタイプなので^^;

[モンスター]ノ面白さが読むまえからよく伝わってきますた^^ってか、れいなさんの文章
そそりっれます^^
以前のブログ記事イケメン ブサメン、再度読み返したられいなさんの変化成長ぶりがうかがえました。
段々落ちついって来たって言うか、穏やかになってきてる感じ。
私は角ばってゴリ押しの文章も好きよ^^ H.Jを更正させた時のような・・・

いつかれいなさんが本を出したら初版で買うからね!^^そん時はサインを求む。Lではじまるサインで。
2016.10.04 22:03 | URL | ともこ♪☆ #- [edit]
コメントありがとうございます。
こんな長い記事、誰も読まないかな?
と思ってたんですが、興味を持って下さって嬉しいです。
これは読み易いのでスラスラ進むと思います。
男女差のそういう話も正に出てきます。
風俗で荒稼ぎの下りで。
具体的に言うと、
男性は「目で」SEXをする。という話。
顔を見て性的興奮する。身体を見て興奮する。
ブスの時は客は私の顔をできるだけ見ずに「行為」をしていたが、徐々に整形して美人になっていくにつれて私を見て興奮する様に明らかに変化していった。などなど。

私もともちゃんと同じでだいたい会った瞬間見た瞬間に自分と合う人かどうか判って、実際外れた事はほぼ無いのですが、
それも整形という「チート」があると必ずしも当たらなくなるかもしれません。顔だけならすぐ見破れそうですが喋り方とか仕草とか醸し出すオーラまでも偽物で取り繕われたら。
この主人公はそういう事までやってのける凄い人なのです。

マリカWii時代は周りのフレンド層も学生が多く、テンション高いノリが普通だったので、あの記事より更に一年前くらいのバトンの記事など今読むと顔から火が出そうです。
リンク貼った記事の頃は既に大人のフレンドが多い時期だったのでかなりマシですがそれでも確かに今とは違いが有りますね。
あの記事のotosanへのコメレスで「5年後にこの記事を読み返したら・・・」などと書いていますが、もう正にその5年後が今年なのだと思うと光陰矢の如し(TДT)
「真の破壊神」→「HIJANX」、昨日の事の様に覚えてます。
ああいう大立ち回り、エネルギー消費ハンパ無いからもうやらない・関わらない。と思いつつもやっぱりDQXのチーム内でも冒険者の広場でも未だにやってしまっています。
ああいう性格はもう小学校の頃からですのでそうそう変わる事は無いでしょうね~
2016.10.05 12:57 | URL | れいな #9PzNIGQk [edit]

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